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Anthropicの新レポート:AIが実際に使われている業務を数百万件のログから徹底解析

Anthropicが公開した大規模調査:AI活用が進む職種・タスクが明らかに

以下では、Anthropic(「Claude」という大規模言語モデルを開発しているAI企業)の研究チームが発表した大規模調査について、経営者向けに、なるべく平易に解説します。英語のレポートをベースにしていますが、専門用語を最小限に抑えつつ、レポートの重要ポイントをまとめました。結論だけ分かりやすく紹介しています。


1. どんな研究? 目的と背景

急速に広がる「大規模言語モデル(LLM)」

  • ChatGPTやClaudeなどの大規模言語モデル(LLM)は、文章やデータを読み取り、人間のように文章回答できるAI技術です。
  • ここ数年、ソフトウェア開発業務文章作成だけでなく、いろいろな仕事の効率化に使われ始めています。

実際の使われ方を調べる理由

  • 「LLMを使うと仕事が速くなる」など抽象的な話は広くされていましたが、どの職種の人が、どんな作業に使っているのかを、大規模かつ客観的に示すデータはあまりありませんでした。
  • そこでAnthropicの研究者たちは、自社LLM「Claude」でやりとりされた数百万件以上の会話ログ(ユーザとAIのやりとり)を、プライバシーを守りながら分析。そこから「どの職種が、どんな業務でAIを活用しているか」を一覧化しました。

2. データの集め方:プライバシーに配慮した仕組み

なぜプライバシーが問題になるのか?

  • 普通に考えると、「ユーザがやりとりしたチャットの内容」を人間が直接見るのはプライバシー侵害の恐れがあります。
  • しかし本研究では、会話の中身を直接のぞかずに、AIが自動的に要約・分類する仕組み(Clioシステム)を用いて、統計情報だけを取り出します。
    • これにより、個人の具体的内容は匿名化され、研究者は「何件の会話がソフトウェア開発に関するものか」などの数字だけを把握できる仕組みです。

調査の方法:会話を「仕事内容」に結びつける

  • アメリカ労働省にはO*NETという職業データベースがあり、そこには「○○という職業は、こういう業務タスクを含む」という情報が大量にまとめられています。
  • LLMが、会話内容をO*NETにあるタスク名と照合し、「このやりとりはプログラムのバグ修正に関するもの」「これは文章の下書きをAIに依頼したもの」等を判定。
  • それを集計することで、「AIはどんな仕事のどんなタスクに使われているのか」を浮き彫りにしました。

3. 見えてきた現状:どこで多用され、どこで少ない?

(1) ソフトウェアと文章作成が突出

  • 分析結果、ソフトウェア関連(例:プログラミング、デバッグ、システム設定)のタスクが最も多かったです。
  • その次が、文章を書く・編集するようなタスク。例:マーケティング文書の作成、ブログ記事やSNS投稿の下書き、メール文章のチェックなど。

(2) 教育や研究、あるいはビジネス関連の書類作成も多め

  • 学校のレポートや、学術研究の一部サポート(文献まとめ等)にも使われている形跡がありました。
  • ビジネス用途では、プレゼン資料のドラフト、契約書のひな型作成、データ分析のヒント出しなどが散見されました。

(3) 物理的作業中心の職種は少ない

  • 農業や建設、医療の「現場作業」など、身体を使う作業が多い職種はほとんどAI利用が確認されませんでした。
    • まだ文章ベースの支援が主なので、モノを動かす仕事には馴染みにくいと考えられます。

4. AIは「仕事全体」を丸ごとこなしている?

実際には一部のタスクだけ担うケースが多い

  • 研究結果によれば、「自社の業務の1/4以上をAIが担う」職業は全体の3~4割ほど。
  • 一方で、「業務のほとんど(3/4以上)をAIに任せる」職業は全体の数%程度にとどまりました。
  • つまり、「AIがある職種を全部自動化してしまう」というよりは、“文章を書く作業だけ” “コードの修正だけ”などの「一部分」をAIに任せている状態が主流です。

5. 「賃金の高い仕事」ほどAIを使っているのか?

中~やや高い報酬の職種で顕著

  • 具体的には、ソフトウェア技術者やコピーライターなど“知的作業が中心”の職種が、AIと相性が良いようです。
  • 逆に、報酬が非常に高い医師や高度専門家の仕事は、(実際には文章作成もありますが)物理的・対面業務や厳格な資格要件が多いので、まだAI利用が進みにくいという結果が出ています。
  • また、低賃金の職業(例:単純接客や対応)も、テキストベースのAI活用場面が少ないため利用率は低かったようです。

6. AIで仕事を「自動化」している? それとも「補助」に使っている?

6割近くは補助的(拡張的)に使われている

  • 人間とAIがやりとりしながら、アイデアを練る・文章をブラッシュアップする……といった「協働」の使われ方が最も多いとのこと。
    • 例:自分で下書きを書いて→AIに校正を頼む→自分で最終修正する
    • 例:Excel関数の書き方をAIに聞きながら、自分が最終的に結果をチェック

4割程度はほぼ丸投げの自動化

  • 「この文書を要約して」「このコードを書いて」というように、ユーザーが指示だけしてあとはAIがほぼ全部こなす形。
  • プログラミングのバグ修正なども、やり方を全部AIに指示させるパターンが少なくなかった。

7. これからの展望と経営者にとってのヒント

(1) テキスト中心から発展する可能性

  • 現在は文章やコードが中心ですが、将来的には画像や動画、音声も高精度で扱えるAIが登場すれば、製造業や医療など物理作業中心の職種でも利用が広がるかもしれません。

(2) タスク単位の棚卸しが重要

  • AIは「その職業を全部」代替するよりも、「タスクの一部」をカバーすることが多いとわかりました。
  • 経営者としては、自社の業務を細分化し、「ここの部分ならAIが使えそう」「ここは人間の判断が大事」といった切り分けをすることが肝心です。

(3) 社員のスキル活用とのバランス

  • 「AIに任せられるところは任せる → 社員は顧客対応や創造的な仕事に集中する」など、仕事の再設計を考えるタイミングかもしれません。
  • 今回のデータからも、AIと人間が協働する形のほうが多いので、AIを使える社員を増やす教育投資も効果的でしょう。

(4) 規制やセキュリティへの対応

  • 高度専門職(医療など)で普及が進みにくいのは、安全性や規制の要件が厳しいことも一因です。
  • 機密データや個人情報の扱いをどうするかも考える必要があります。自社で独自AIを導入する際は、法務チェックや情報管理ルールを事前に整備しましょう。

8. おわりに

この調査は、「AIが現実にどんな仕事で使われているか」を、数百万件ものやりとりから定量的に示す、世界でも珍しい試みです。結果からは、ソフトウェア開発や文章作成などのデジタル作業を中心に、AI導入が広がっていることが改めて確認できました。

一方で、

  • 物理作業・対面が多い職種ではまだ少ない
  • 職業全体を自動化するよりも「一部タスクをAIが担う形」が多い
  • AIとの「協働」が優勢とはいえ、部分的に「全自動化」も存在する

といった点もわかっています。
経営者の方は、「自社のどのタスクをAIにやらせるのが最適か」「社員のスキルや業務フローをどう変えていくか」という具体的な課題設定を行うのが、今後の競争力強化につながるでしょう。

本レポートの発表元: Anthropic社
研究者ら: Kunal Handaなど複数名

https://www.anthropic.com/news/the-anthropic-economic-index

本記事が、AI導入を検討中の経営者の方に、少しでも役立てば幸いです。
不明点やさらに深い話題をお求めの場合は、Anthropic社の公式リリースや、学術論文本文などをあわせてご覧ください。

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